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農業ビジネス

ビニールハウスの住人

農業と生き物の相互作用を解説!

2021年7月16日更新

01農業はさまざまな虫の力を借りて行います

天敵を利用した農法

「農業するなら、昆虫がいるのは当たり前でしょ?」と思うかもしれませんが、「農作物を育てるには、昆虫の助けが必要不可欠だ」ということはご存知でしょうか?

農業をするにあたって、農作物を食べる害虫の対策を行っていくことは必要不可欠です。害虫を駆除するために、その害虫の天敵となる虫をあえて畑に住まわせる天敵農法というものがあります。この農法は世界で幅広く行われており、使用されている昆虫もさまざまです。
たとえば、玉ねぎやイチゴ、オクラといった作物を主食としているアブラムシ。アブラムシは多くの農家さんから煙たがられている存在ですが、このアブラムシを大好物としているテントウムシを農場に住まわせ、人間に代わって退治してもらうのです。他にも、クモやトンボ、ハチの仲間も農場にいるたくさんの害虫を食べます。

このような生き物は天敵農薬と呼ばれ、国から公式に農薬として認められている種類もあります。農林水産省に農薬登録されている天敵は、2015年3月31日までの時点でなんと20種類!薬を使わずに害虫を駆除できるので、安全面が保証でき人体に影響のない農薬といえますね。

ハチを使った農法

ハチを使った農法

続いて紹介する農法はミツバチの力を借りて行う農業です。

野菜や果物は、咲いた花に花粉をつけて受粉をし、実をつけて種の繁栄をしていきます。つまり、受粉を行う生き物がいないと世界中の植物は子孫を残すことができません。この受粉作業を人間が行うとなると、とてつもない手間がかかり、大量に行うことは困難です。ミツバチにはその日咲いた花には必ず止まるという習性があります。そのため、人間のように受粉作業を忘れて農作物に実がつかないといったことが無く、すべての花にまんべんなく受粉を行うことができるのです。

逆にミツバチも、植物から分泌される花粉と蜜を食料にして生きているので、植物がいないと生きていくことができません。この共生関係を利用して、人間では行うことのできない受粉作業をミツバチに委ねているのです。次章から、より深くミツバチについて解説します!

02ミツバチがいないとおいしい作物は食べられない!?

ミツバチを使って栽培している作物はなに?

野菜の収穫

続いては、ミツバチを利用してつくられる主な農作物を紹介します。
世界ではミツバチの訪花活動を利用してイチゴ、メロン、サクランボ、スイカ、パプリカ、トマト、ナス、キュウリ、カボチャ、ゴーヤ、タマネギ、柑橘類、リンゴ、モモ、ナシ、ウメ、マンゴー、ブルーベリーなど数えたらきりがないほど多くの農作物を栽培しています。こうしてみると、いかにミツバチが農業はもちろんのこと、私たちの生活には欠かせない存在であるかということが分かりますね。

また、国連の科学者組織「IPBES(アイピーベス=生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)」によると、花粉を運んで、農作物の生産を手助けしてくれるミツバチなどの生物がもたらす経済効果は日本円にして約66兆円と報告されています。

ミツバチの減少

ミツバチは皆さんが想像している以上に、私たちの生活に関与しています。ミツバチがこの地球からいなくなると、世界の食料のほとんどが食べられなくなってしまう可能性があるのです。

国連環境計画(UNEP)によると、「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している」と報告されています。「もしこの地球上からハチが消えたなら、人類は4年しか生きられない」という所説もあり、ミツバチが絶滅してしまうと、食べ物が無くなり、人類の存続の危機が訪れてしまいます。

減少の理由

現在、ミツバチが原因不明の理由で大量に姿を消す蜂群崩壊症候群が世界で観測されています。原因はさまざまなものが考えられており、そのひとつが農業の衰退です。農業の衰退が社会問題になっていることをご存知の方も多いのではないのでしょうか?

1960年に農業人口は約1,175万人でしたが、農林水産省が2020年11月に発表した情報によると2020年の農業人口は136万人で、1960年から減少の一途をたどっています。農業人口が減ることで農地が放棄されたり都市開発が進んだりして、シカやイノシシといった野生動物が町へ降りてきて農作物や草木を食い荒らしてしまいます。食い荒らされて草木の生えない野山ができあがり、不安定な土壌基盤の野山に台風や大雨が降ることで、ミツバチの蜜源になっていた植物が大量に倒れたり枯れたりしてしまいます。

このようにしてその土地の植生の変化を進んでいくと林内が明るくなったり、土砂に覆われてしまうことで一層ミツバチがエサにしている蜜源植物が生えなくなってしまうのです。

03ミツバチを上手く利用するには?

ミツバチの生態をご紹介

野外蜂群における育児の季節変動

ミツバチは群れをなして生活をしており、高度な社会性を確立している昆虫として知られています。活動期には6万匹以上のミツバチが集まってひとつのコロニーを形成しています。

また、季節によって生活が変わります。暖かい春になり植物の開花の時期を迎えると、育児が盛んになり、訪花活動を行います。ある程度の育児を終え、群れの数が増すと繁殖期に突入します。夏は花の少なく、ミツバチの活動も厳しい時期ですが、秋になると越冬用に十分な貯蜜を確保するため、また訪花活動が盛んになります。冬は寒さの中で冬眠することなく春まで耐えなければなりません。越冬中は女王蜂の産卵と育児は停止しますが、冬が明けるに連れて産卵が再開しますので、貯蓄しておいた蜜と花粉の消費が激しくなります。

温度管理

続いては、農業でミツバチを上手く活用するコツを紹介します。

温度管理

ミツバチに効率よく働いてもらうために必要な1つ目の要素は、ハウス内の温度管理です。1年を通してミツバチが過ごしやすい温度管理をすることが大切になってきます。ミツバチが訪花活動を行う気温は18℃~25℃の太陽の光が出ている時です。日中のハウス内は気温が上がりやすく、湿度も高くなるため、ハウス内の換気はミツバチの活動を手助けするためにとても大切です。ハウス内の温度差が大きいところや、湿度が高いところを避け、環境の変化が少ないところに巣箱を設置してあげましょう。

ちなみに巣内の温度は約34℃で、産卵と育児を行っています。この温度管理を失敗すると育児ができずに数が減少します。ハウス内が熱くなると、羽ばたくことによって巣内の換気をしたり、巣内に貯めていた水分を蒸発させ気化熱を奪って温度を下げます。そのため、ハウス内の湿度が高いと巣内の温度を下げづらくなってしまいます。寒いときは働きバチが集団で胸部の筋肉を使って発熱し、巣内を約34℃に保とうとします。この発熱は外敵から身を守るときにも使用し、数百匹もの数で外敵を包み込んで46℃~47℃で蒸し殺してしまいます。恐ろしい…

ミツバチの数

使用方法 短期間・追加利用の場合 単棟ハウス(10a以下) 連棟ハウス(10a以上)
イチゴの場合のミツバチの数 無王群(約2000匹程度) 1群(6000〜8000匹)/td> 2群以上(12000匹〜)
10a=1000m2=1反

ミツバチに効率よく働いてもらうために必要な2つめの要素は、ミツバチの数です。多くの数を飼育するからといってたくさん受粉ができるわけではありません。数が多すぎると、群れの数を維持するためのエサが不足してしまいミツバチの数の減少の原因となります。ハウスの面積や栽培する作物の量に見合ったミツバチを飼いましょう。イチゴの栽培を例にした場合、10aで1蜂群当たり約9000匹が適正な数といわれています。農場の規模によって、2群、3群と複数設置することもあります。

農薬の管理

農産物を守る毒性が低い農薬でも、ミツバチの訪花活動に支障をきたす場合があります。農薬を散布する際は巣箱をハウスの外に出し、ミツバチの安全を考えて余裕を持った農薬散布のスケジュールを組み立てることが大切です。また、ミツバチは自分の巣を覚えているわけではなく、巣箱のあった場所を記憶して帰巣しているので、元あった場所に正確に巣箱を戻しましょう。

世界ではミツバチ減少を食い止めるために、ミツバチ減少の原因と考えられているネオニコチノイド農薬の規制が進んでいます。この農薬は低濃度で昆虫の神経細胞を継続的に興奮させ、死に至らせる農薬です。EUでは2018年ネオニコ系農薬3種が全面禁止に、フランスでは2018年から全種類が使用禁止になりました。一方日本では、ネオニコ系農薬の使用を禁止しておらず、適用拡大と規制の緩和が進んでいます。

04まとめ

いかがでしたか?私たちが日常的に野菜や果物を食べることができる裏には、昆虫の手助けが必要だということが分かったと思います。
もしミツバチを見かけた際は、感謝の気持ちを思い出して観察してみてくださいね。

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