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食と農業

国産砂糖のはなし

知っておきたい!
砂糖の原料と役割について

2020年12月11日更新

甘いだけじゃない!
砂糖が担うさまざまな役割をご紹介

調味料やお菓子の材料として欠かせない砂糖。最近は糖質制限ダイエットなど健康志向の高まりもあり、砂糖はとかく悪者にされがちですが、砂糖はただ“甘さ”だけが求められる存在ではありません。
今回は、調味料としての位置付けだけにとどまらない、砂糖のさまざまな役割をご紹介します。

01砂糖ってなあに?

砂糖を生み出す二大作物

砂糖の原料といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、サトウキビではないでしょうか。温暖な気候で育つサトウキビは、国内では沖縄県と鹿児島県の南西諸島で昔から作られてきました。

実はもう一つ、日本には砂糖の原料となる作物があります。北の大地、北海道で栽培されているてん菜(別名:ビート)です。形が大根に似ていることから「砂糖大根」とも呼ばれていますが、植物の分類ではホウレンソウの仲間になります。

あまり知られていませんが、国内で供給されている国産砂糖(国内産の作物を原料にした砂糖)のおよそ8割がてん菜を原料に作られています。

国内産糖の生産動向(平成30年砂糖年度)
※砂糖年度とは、当該年の10月1日から翌年の9月30日までの期間です。
※産糖量は、てん菜糖は製品ベース、甘しゃ糖(サトウキビ)は産糖ベースの数量
※パーセンテージは小数点以下で四捨五入した数字
出典:農水省 令和2砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し

サトウキビとてん菜は形が全く異なる作物ですが、サトウキビは茎の部分に、てん菜は根にたっぷりの糖分が含まれています。栽培適地が国の南北の端にわかれ、生育環境が大きく違う世界で、同じ砂糖の原料がとれるのはおもしろいですね。

国内産糖の生産動向(平成30年砂糖年度)

てん菜の方は、砂糖の原料としてだけでなく、ジャガイモ、小麦などとともに一定の順序で繰り返し栽培される「輪作作物」の役割も担っています。輪作には、同じ作物を同じ畑で連作することで発生する病気を、異なる作物を栽培することで防ぐ効果があります。

原料作物から砂糖ができるまで

サトウキビ、てん菜から砂糖ができるまでを簡単にご紹介します。

砂糖ができるまで

製糖工場に運ばれたサトウキビは圧搾機によって、糖汁が搾り出されます。糖汁は蜜と原料糖に分離された後、原料糖はさらに精製の工程を経て、精製糖(上白糖、グラニュー糖など)として製品化されます。
てん菜は、工場で細かく刻まれた後、温水に浸す方法で糖分が取り出されます。

精製後の砂糖は、色や結晶を見ただけでは、なかなか原料の区別はつきません。市販の砂糖の原料を知りたい場合は、商品名に「てんさい糖」「きび糖」などの記載があるか、パッケージの表示をチェックしてみましょう。

02砂糖のはたらき

砂糖の効用

砂糖といえば、ダイエットの天敵とばかりにデメリット面ばかりが強調されがちですが、砂糖は単に料理に「甘さ」を加えるだけのものではありません!普段何気なく使っている砂糖には、実にさまざまな働きがあるのです。
ここでは砂糖が水と結びつきやすい性質(親水性)を利用した、いくつかの効用をご紹介します。

肉をやわらかくする

肉に砂糖をもみ込むと、肉のタンパク質と水分が結びつき、肉が柔らかくなります。

泡を安定させる

お菓子作りでメレンゲをつくるとき、卵白に砂糖を加えると砂糖と卵白の水分が結びつき、くずれにくいメレンゲができます。

脂肪の酸化防止

脂肪の酸化を防ぎ、焼き菓子などで使用したバターの風味を保つことができます。

防腐性

食品に砂糖をたくさん使うと、細菌の繁殖に必要な水分が砂糖に吸収され、腐りにくくなります。

そのほかにもパンを発酵させるイーストの働きを助けるなど、砂糖はあらゆる食品の製造で欠かせない役割を持っています。ぜひ、こうした砂糖の働きも料理に上手く取り入れてみてはいかがでしょうか。

エネルギー源としての役割

国内に流通している砂糖は、海外からの輸入糖が6割を占めています。食料自給率が低い日本で、私たちは国産砂糖からどのくらいのエネルギーを得ているのでしょうか。

砂糖ができるまで
出典:農水省 令和2砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し

農林水産省「食料需給表」によると、カロリーベースで見た国の食料自給率38%(平成29年度)のうち、砂糖類から得られるカロリーは2.5%を占めています。この数字を少ないと感じる方も多いと思いますが、米、畜産物に次いで3番目に多い数字です。

輸入により問題なく食料を補えるうちは、食料自給率が低い日本でも困ることはありません。しかし、予測不可能な災害などはどこの国でも起こりうるため、この先もずっと安定して食料を手に入れられるとは限りません。

実は、すぐエネルギーを補給できるという点で、非常時において砂糖はとても優れた食品です。東日本大震災が起きた直後は、被災した方々の非常食として氷砂糖が活躍したそうです。(※1) 乾パンの缶詰でよく見かける氷砂糖は、こうした理由からだったのですね。
不測の事態に備える上でも、砂糖を自国で賄うことは重要なのです。

(※1)独立行政法人農畜産業振興機構サイト 砂糖の豆知識2011年7月号より

03砂糖が支える地域経済

農業産出額で沖縄県内2位

砂糖の生産には農家をはじめ、製糖工場で働く従業員など、たくさんの人々が関わっています。沖縄県を例に、砂糖産業と地域の関係をみてみましょう。
沖縄県では、サトウキビ畑が耕作地全体の約4割を占めています。また、農産物ごとの農業産出額(生産から加工販売にいたるまでに産み出される売上)の順位では、サトウキビは2位で上位にランクイン。沖縄県の農業の収入源として重要な作物に位置付けられていることがわかります。

しかしいま、砂糖産業は生産者の高齢化や担い手不足などの課題に直面しています。そこで注目されているのが衛星を活用したスマート農業です。
南大東島では生産者と大学などが共同で、サトウキビ畑でスマート農業の実証実験を進めています。
この実験では、衛星から送られてくる位置情報をもとに、農機の自動操縦などに取り組んでいます。実用化されたら、無人で農機を動かす光景があちこちで見られるようになるかもしれません。

出典:内閣府 沖縄総合事務局「平成30年 農業産出額(沖縄県)」open_in_new
出典:農畜産業振興機構「沖縄県における令和元年産さとうきびの生産状況について(沖縄県農林水産部糖業農産課)」open_in_new
出典:農林水産省 スマート農業実証プロジェクトopen_in_new

付加価値をもたらすサトウキビ

一方、サトウキビに新たな付加価値を見出した商品も生まれています。沖縄本島の豊見城市では、サトウキビの葉と穂を利用して染色した「ウージ染め」によるシャツや小物類などの特産品がつくられています。
ほかにも黒糖を使ったアイスクリームやぜんざいが販売されるなど、めずらしさもあって観光客が買う姿もよく見られます。

こうした取り組みはさらなる経済効果にもつながり、地域の人々にとって、サトウキビはなくてはならない大切な存在となっています。

砂糖ができるまで

国産砂糖を守るしくみ

国産砂糖の製造コストは、海外産に比べると、てん菜が約2倍、サトウキビは約6倍。価格差はかなり大きいのが現状です。そこで、国は国内の砂糖産業を守るため、海外から輸入される原料糖からは調整金を徴収し、国内の生産者、製糖業者には交付金という形で支援しています。この仕組みにより、海外産との価格差を縮めることができ、生産者が安心して作物をつくり続けることができます。

04まとめ

今回は、砂糖のさまざまな役割と生産事情をみてきました。砂糖はこれからもなくてはならない食品であり、てん菜、サトウキビは、生産者をはじめ地域経済を支える重要な作物です。製造コストの面では、海外産に比べ不利な立場に置かれていますが、これは砂糖に限ったことではなく、日本の農業全体が抱える問題でもあります。
海外産との競合が避けられない昨今、日本の農産物を守るにはどうしたらよいか、砂糖を通じて考えるきっかけにしていただけたらと思います。

参考資料
・農畜産業振興機構サイト
日本の砂糖を支える仕組みopen_in_new
・農林水産省サイト
砂糖のすべてopen_in_new

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