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食と農業

あなたの知らない

ブランド米の世界

コシヒカリだけが
ブランド米じゃない!

2020年11月12日更新

日本人なら知っておきたい
ブランド米の最低限のこと

「コシヒカリ」を知らない日本人はほとんどいないと思います。「あきたこまち」もよく聞きます。では、「夢つくし」は? 「とちぎの星」は? いずれもブランド米で、味の評価も高い米ですが、知らない人は多いのではないでしょうか?
今回は、ブランド米を取り上げたいと思います。

01ブランド米の王者コシヒカリ

コシヒカリはブランド米の頂点に立っています。作付け面積は、1979年から30年以上にわたり、第1位に君臨し続け、コシヒカリという銘柄を知らない日本人はいないといっても過言ではないでしょう。
2019年も、作付割合が33.9%で、ダントツの1位です(資料1)。
そのコシヒカリはどのようにして生み出されたのでしょうか?


資料1 令和元年産うるち米(醸造用米、もち米を除く)の品種別作付割合上位20品種

順位 品種名 作付割合 主要産地
1 コシヒカリ 33.9% 新潟、茨城、福島
2 ひとめぼれ 9.4% 宮城、岩手、福島
3 ヒノヒカリ 8.4% 熊本、大分、鹿児島
4 あきたこまち 6.7% 秋田、茨城、岩手
5 ななつぼし 3.4% 北海道
6 はえぬき 2.8% 山形、香川
7 まっしぐら 2.2% 青森
8 キヌヒカリ 2.1% 滋賀、兵庫、和歌山
9 あさひの夢 1.7% 栃木、群馬
10 ゆめぴりか 1.6% 北海道
11 きぬむすめ 1.5% 島根、岡山、鳥取
12 こしいぶき 1.4% 新潟
13 つや姫 1.2% 山形、宮城、島根
14 夢つくし 1.0% 静岡
15 ふさこがね 0.9% 千葉
16 つがるロマン 0.8% 青森
17 あいちのかおり 0.8% 愛知、静岡
18 彩のかがやき 0.7% 埼玉
19 天のつぶ 0.7% 福島
20 きらら397 0.7% 北海道

出典:公益社団法人米穀安定供給確保支援機構

1.1 昭和54からランキングで
毎年トップのコシヒカリ

コシヒカリは、1944年に新潟県で「農林22号」と「農林1号」を交配させて誕生した稲がもとになっています。これを福井県が多収品種として育成し、56年に「農林100号」として品種登録されました。コシヒカリという名前は「越の国(現在の福井県敦賀市から山形県庄内地方の一部に相当する地域)に光り輝く品種」という願いを込めて命名されました。

2005年には、主産地の新潟県で、いもち病に弱いという弱点を克服した「コシヒカリBL (Blast Resistance Lines)」という品種も導入されています。

コシヒカリの祖先は、明治時代に生まれた「亀の尾」という稲です。1893年に起こった冷害の中、山形県の篤農家(農業に携わり、その研究・奨励に熱心な人)であった阿部亀治さんが3本の穂をつけた稲を発見し、その種から何年もの歳月をかけて、冷害に強く収穫量が多く、食味のよい品種を育成したと言われています。コシヒカリは、その「亀の尾」のひ孫に当たり、おいしく、耐寒性を受け継いでいます。

1.2 コシヒカリ一族が席巻

日本で栽培されている稲は、コシヒカリとその子どもや孫、ひ孫といった関係の品種がほとんどです。
例えば、2019年の作付面積が2位の「ひとめぼれ」、3位の「ヒノヒカリ」、4位の「あきたこまち」、さらに10位に入っている品種の大半が、すべてコシヒカリ一族です。コシヒカリの風味を生かしつつ、各地の風土に合った品種へと改良されています(資料2)。

資料2 コシヒカリを中心とした品種の系譜図

コシヒカリを中心とした品種の系譜図 コシヒカリを中心とした品種の系譜図
出典:農林水産省

1.3 品種改良

品種改良は、主に国や都道府県の農業試験場で行われています。
日本で本格的に米の品種改良が始まったのは1903年。交配育種法によって日本初の品種が誕生したのが1921年です。

昭和に入ってから国や都道府県の農業試験場で改良された品種は800種を超え、うち270種が全国で栽培されています。

このように、イネと稲の弱みや強みを掛け合わせて、土地や気候に合った様々なイネが研究され、そうしておいしい米が何年もかけて開発されてきました。

米の品種が改良されるまで 米の品種が改良されるまで

1.4 「米の食味ランキング」

米のおいしさを産地ごとに評価するのが「米の食味ランキング」(資料3)です。
日本穀物検定協会が主催し、白飯の「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目について、「複数産地コシヒカリのブレンド」を基準米に、これと試験対象産地品種を比較評価する「相対法」によって実施しています。

基準米と同等なものを「A'」、良好なものを「A」、特に良好なものを「特A」(平成元年産から設置)、やや劣るものを「B」、劣るものを「B'」とランクづけしています。(令和元年度は2019年11月から2020年2月の間に試験されました。)

これは1971年産米から開始され、ランキングは米を実際に食べて審査する「食味官能試験」をもとに作っています。

下の表は、令和元年産米食味ランキング「ランク特A」54銘柄です。やはり、コシヒカリが強いですが、コシヒカリも産地によって、評価が変わっているのもおもしろいですね。

資料3 令和元年産米食味ランキング「ランク特A」54銘柄

都道府県 / 地域 銘柄
北海道 ゆめぴりか
北海道 ななつぼし
北海道 ふっくりんこ
青森 / 津軽 晴天の霹靂
青森 まっしぐら
岩手 / 県中 銀河のしずく
岩手 / 県中 ひとめぼれ
宮城 ひとめぼれ
宮城 つや姫
秋田 / 県南 あきたこまち
秋田 / 中央 ひとめぼれ
山形 / 村山 つや姫
山形 / 置賜 つや姫
山形 / 村山 雪若丸
山形 / 置賜 雪若丸
福島 / 会津 コシヒカリ
福島 / 浜通 コシヒカリ
福島 / 中通 ひとめぼれ
福島 / 中通 コシヒカリ
茨城 / 県央 コシヒカリ
栃木 / 県北 コシヒカリ
栃木 / 県北 なすひかり
栃木 / 県南 とちぎの星
千葉 / 県北 コシヒカリ
新潟 / 上越 コシヒカリ
新潟 / 魚沼 コシヒカリ
新潟 / 岩船 コシヒカリ
福井 いちほまれ
長野 / 東信 コシヒカリ
長野 / 北信 コシヒカリ
長野 / 中信 コシヒカリ
岐阜 / 飛騨 コシヒカリ
静岡 / 西部 にこまる
静岡 / 東部・中部・西部 きぬむすめ
滋賀 コシヒカリ
滋賀 みずかがみ
兵庫 / 県北 コシヒカリ
兵庫 / 県南 きぬむすめ
島根 つや姫
岡山 きぬむすめ
徳島 / 北部 あきさかり
香川 おいでまい
愛媛 にこまる
高知 / 県北 にこまる
高知 / 県西 にこまる
高知 ヒノヒカリ
佐賀 夢しずく
佐賀 さがびより
長崎 にこまる
熊本 / 県北 コシヒカリ
熊本 / 県北 森のくまさん
宮崎 / 西北山間 ヒノヒカリ
宮崎 / 霧島 ヒノヒカリ
鹿児島 / 県北 あきほなみ

出典:日本穀物検定協会

1.5 しかし、
米はコシヒカリだけじゃない

これまで、東北や北陸の米が強く、品種も限られており、コシヒカリ一族が力を誇示しているのは書いた通りです。
しかし今、北は北海道、南は中国、四国、九州など、多彩な新品種が続々「特A」に選ばれています(資料3)。

例えば、北海道は「ななつぼし」が2010年産米から10年連続、「ゆめぴりか」は11年産米から9年連続で特Aを獲得し、高い評価を得ています。ゆめぴりかは、ANAのファーストクラスにも採用されたお米です。

地球温暖化を背景に、高温に強い新品種を続々と誕生させているのは、中国、四国、九州の銘柄です。

九州地方は佐賀の「夢しずく」「さがびより」、長崎の「にこまる」、鹿児島県県北の「あきほなみ」が昨年に続き特Aを獲得。熊本県北「森のくまさん」は、昨年はAでしたが今回は特Aになりました。

「にこまる」は、静岡(西部)・愛媛・長崎県でも特Aを受賞しており、比較的温暖な地域で栽培される米としての能力が高いようです。


最後に、栃木の「とちぎの星」を紹介します。「とちぎの星」は、令和元年の即位の式典の際に、皇室への「大嘗祭献上米」となりました。この米も、3年連続で特Aを得ています。
米の味だけでなく、米の「物語」にも注目してもおもしろいと思います。

02米の生産

農家の努力のおかげで、多種多様のおいしいお米が日々作られています。一方で、生産者の高齢化など農家の数は年々減少しているなど懸念材料はあります。
その中で、中食・外食に注目した米作りがにわかに活気づいてきました。

2.1 専業農家と兼業農家

専業農家は、家族の中に農業以外の仕事をしている人がいない農家のことです。逆に兼業農家は、家族の中に農業以外の仕事をしている人がいる農家のことです。

農家の数は年々減少していますが90年以降は特に兼業農家が減少しています(資料4)。その背景には高齢化、地方の働き口の減少などの要因が考えられます。

その中で、政策推進とJAの支援によって、各地で農地の規模拡大や多くの集落営農または集落営農法人の設立が進みました。これにより、規模の大きい経営体が稲作を担うという構造に転換しつつあります。

資料4 専業・兼業別農家数の推移
専業・兼業別農家数の推移 専業・兼業別農家数の推移
出典:『図解知識ゼロからのコメ入門』

2.2 家庭用米と業務用米と作り分け

生産現場では長年にわたり、家庭用米と業務用米(レストランやコンビニで使われる米)を明確に区別してきませんでした。つまり、業務用でも家庭と同じ産地・品種・銘柄の米が用いられてきました。

しかし、中食・外食企業は、安くて(ほどほど)おいしいのはもちろんこと、例えばおにぎりには味の他に、粘りや歯ごたえ、丼物であれば、つゆの通りが良く、硬いものなど、業種や献立によって、変わります。

そこで、産地と中・外食企業とのマッチングを行う展示商談会も開催され、取引が拡大させる動きが高まってきています。生産者も中・外食用に生産コストの削減やより多く収量できる品種の栽培も進めています。
言い方は悪いかもしれませんが、ほどほどの品質の米を手ごろな価格で手に入れる方向に向かっています。

2.3 業務用の低価格米を侮るなかれ


家庭用米と業務用米

家庭用米と業務用米 家庭用米と業務用米
ラーメン屋などで出されるのは業務用米が多い ラーメン屋などで出されるのは業務用米が多い

業務用米は、ほどほどの品質と書きましたが、しかし、業務用米でも品質が評価されるものもあります。

例えば、「まっしぐら」は、青森県で2009年から栽培されているお米です。
収穫が多く、栽培が容易なので、業務用に多く使われるお米です。こうしたタイプのお米は、めったに特Aをとれないのですが、気候条件がうまく合った年は、「特A」を取ることがあります。

「きらら397」(資料5)は、1990年に生まれた北海道のお米です。平成とともに生きてきた伝統あるお米です。
業務用に活躍する多収量米ですが、近年は、食味値としても評価があがって、「A」を安定的に得ていました。
業務用の米も侮れません。

資料5 きらら397
きらら397 きらら397

03米の生産

米の生産量が上がる一方で、消費量は減少傾向です。その間、流通ルートに変化が起こり、出荷側の競争は激しくなりました。しかし、農家も手をこまねいているだけではなく、新たな販路を開拓しています。

3.1 増える収穫量、伸び悩む消費

米の生産量は1967年に史上最高となる1425万tが収穫されました。これは、農薬、肥料、品種改良などによる生産技術の向上が最も大きな要因です。
(ちなみに2018年は778万t)

一方で、米の消費量はこのときから減少傾向にあり、1963年の国全体の総消費量は1341万tをピークに減り始めます。2018年の一人当たりの消費量は53・1kgで、ピーク時の半分近くまで落ち込んでいます(資料6)。

資料6 米の全体需給の動向

米の全体需給の動向 米の全体需給の動向
出典:農林水産省「米をめぐる関係資料令和2年7月」

3.2 流通ルート

これまで農家は原則としてJAに出荷するように決められていましたが、1995年に法改正が行われ、農家は直接、卸や小売り、消費者に米を販売できるようになりました(資料7)。流通経路が多様になったことで、出荷側の競争は激化しました。

資料7 現在の米の流通ルート(2019年)

現在の米の流通ルート(2019年) 現在の米の流通ルート(2019年)
出典:『図解知識ゼロからのコメ入門』

逆に卸や小売りからすると、仕入れルートが増えたことによって、価格決定の主導権が、次第に卸や小売業者が握るようになりました。

・消費が伸びるパック米飯

最近では、パック米飯の消費量が増えています。便利だというのはもちろんこと、保存ができる上に、おいしくなったという声も聞こえます。
この動きを受け、JA香川県やJA秋田しんせいなどのJAの中には、無菌放送米飯を商品化して米の新銘柄をPRしたり、既存ブランドの認知度のアップを測ろうとする動きも出ています。

・香港やシンガポールを中心に輸出が増加

2013年に「和食:日本人の伝統てきな食文化」が無形文化遺産に登録されたこともあり、日本食の認知度が進んでいます。

この動きを背景に、日本米の輸出も増え続けています(資料8)。主な輸出先は、香港、シンガポール、アメリカ、台湾、中国などです。

資料8 輸出の現状

輸出の現状 輸出の現状
出典:農林水産省「米をめぐる状況について 令和2年10月」

しかし、米を炊くには、炊飯器をはじめ、水なども重要で、日本と同じような味を楽しめない場合も多いようです。
そこで、先述したパック米飯が注目されています。

04まとめ

今回紹介したことは、まだまだ米の一握りのことですが、もし興味を持たれたら、まずは普段食べているお米以外に、あなたの地元や旅行先で作られている米と食べ比べてみてください。それだけでも、色々な発見があるはずです。

米は本当に多種多様なものが作られています。産地や銘柄による違いは先に記しましたが、「氷温貯蔵米」「特別栽培米(JAS基準で5割以上農薬を削減した特別なお米)」など、産地以外の点でプラスアルファの要素があるものも作られています。

また、「米の食味ランキング」で評価されていない米がおいしくないというわけではありません。自分が好きな米は何か? 今はインターネットで日本中の米を簡単に手に入ります。たまにはいつも買っている米以外のものを買って、食べ比べをしてみてはいかがでしょうか?

「米の食味ランキング」に敢えて出さない米もあります。試験日が収穫時期から離れている、収穫量が少ないなどがその理由です。認知はされていませんが、特Aの評価を受けてもおかしくない米は隠れています。インターネットで販売されているので、興味があれば調べてみてください。
ただし、希少なので、すぐに売り切れになるものも多いので、ご注意ください。

今ある日本の米は、先人たちが研究、品種改良し、より良いものを作ろうと心血を注いでできたもので、世界に誇れる財産です。
今後、海外でも当たり前のように、日本のブランド米が食べられる時代が来るかもしれません。


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