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食と農業

新型コロナウイルス

感染症と食料事情

(2020年7月執筆)

新型コロナウイルス感染症禍の日本の食料供給は
どうだったのか、今後どうなっていくのかを解説!

2020年7月10日更新

コロナ禍でも
日本の食料は大丈夫なのか?
そこが知りたい!

新型コロナウイルス感染症禍(以下コロナ禍)の中、日本では4月7日に緊急非常事態宣言が発表されました。
企業と学校の休業や国家間の移動制限など私たちの生活も一変しました。
この緊急事態宣言は、5月に都道府県別に解除する動きが始まり5月25日に最後まで残っていた1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)も解除されました。とは言え、第2波、第3波の可能性もあり現在(2020年7月)も予断の許されない日々が続いています。
その中で食料供給はどうでしょうか?
例えば、マスクは医療機関も含めて、供給量が不足し、大きな不安として日本を覆いました。相次ぐ飲食店の休業も起こっています。
ここではコロナ禍における食料供給について見てみたいと思います。

01食料供給に問題は起きなかった事実

農林水産省が6月8日時点で発表した「主要穀物等の供給状況について」「食品の価格動向について」などのデータがあります。
そしてどのデータも、現在(2020年7月)までに国内の食料供給には大きな問題が起きていなかった事をはっきり伝えています。

主要穀物等の供給状況(2020年7月現在)

●コメ
日本の主食であるコメの国内消費は、ほぼ国産で賄われていて備蓄も確保されています。農林水産省は政府備蓄約100万トン、⺠間在庫約230万トンがあることを発表しています。
どれぐらいの量かと言うと、国民1日当たりの米の消費量を約2万トンとすると5.5ヶ月分、約165日の在庫になります。

●小⻨
小麦のほとんどは輸入で、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが主要な輸出国です。例えばアメリカの輸出のインフラは問題なく機能しています。
また、日本への輸出用の銘柄も在庫が豊富にあります。国産小⻨の生産量約80万トン/年です。
外国産小麦の国内備蓄も約93万トンを確保しています。これは需要量の2、3ヶ月分、約70日分です。
小麦の国際価格も安定しています。ロシアやウクライナが輸出規制を行っていますが、これらの国からの食糧用小麦の輸入はないので現在影響はありません。

●大豆
主要輸入先国であるアメリカにおいて輸出のインフラは問題なく機能しています。原料、製品ともに需要を満たす在庫量が存在し、国際価格も安定しています。

●とうもろこし(飼料用)
こちらも国際価格は安定しています。主要輸入先国であるアメリカにおいて大豆と同様、輸出のインフラも問題なく機能しており備蓄も確保されています。
代替品として、こうりゃん、大⻨、小⻨、大豆油かす、飼料用米などもあります。
飼料とは牛、豚、鶏のエサの事ですから、国産の畜産製品に今すぐ影響が出ることも避けられそうですね。

食品全体の価格動向(2020年7月現在)

コロナ禍にあってもその影響と取られる様な大きな価格変動は見られず、横一直線で安定していました。
一時的な買い占めが行われたというニュースは流れましたが、スーパーで値段が数倍に跳ね上がるような食料品はなかったわけです。
つまり日本の食料品の在庫情報と流通網がしっかり機能していたと言えるでしょう。

02食料供給安定の裏側で苦労している農家への支援

ここまでコロナ禍にあって、国民への食料供給や食品価格に問題が起きていなかった事を解説してきました。
しかし実はその裏側で、販売不振に陥る農家の問題が起きていたことについて触れていきたいと思います

農家への負の影響もあるという事実

まず大前提として勘違いしてはいけないのが、外食産業や宿泊業などコロナ禍であからさまに大ダメージを被った業界とは違い、農業界は全体として従来の経営を維持できているという事です。
しかし全くダメージが無かったわけでもありません。学校の休校によって給食の材料が余ったり、趣向品として世の中に出回っている特定の食品に関しては需要が低下したため、販売不振に苦労する農業生産事業者も少なからず出始めてきています。
そこで国は、販売促進活動が難しくなった農業生産事業者を助けるために、次の支援策を速やかに組み立てて実施しています。

国が行う農産物販売促進の支援

①農産物のインターネット販売推進事業
内容:物流費の一時支援など

②食育等推進事業
内容:子ども食堂へ食材などを提供する際の費用を負担することで、事業者の減収を防ぎ、食品ロスを防ぐ

③農林水産物の販路の多角化推進事業
内容:デリバリーやテイクアウト等、飲食店の販路多角化で使用する食材費・容器包装費を支援

④地域の創意による販売促進事業
内容:野菜直売所や近くのスーパーの販促キャンペーンで使用する食材費等を支援

これらの支援策は要するに、コロナ禍の影響を受けやすい品目を生産している農業生産事業者が倒産してしまったりしない様に、将来的な生産能力の低下を招かないように、国が先手を打ったということに他なりません。
今回の全世界的なコロナ禍の影響が過ぎ去った時に、日本農業の生産能力が大きく低下していては私たち国民も困りますし、失った能力を取り戻すにも時間が掛かってしまいます。
ゆえに食料供給という国民の生命の根幹に関わる部分を今、国が重く捉えているのは健全な危機意識だといえるでしょう。

03今後(2020年7月以降)も日本の食料は安心なのか

さて2020年7月までの食料供給については乗り切ることができた日本ですが、これからも続いていくコロナ禍において私たち国民は引き続き安心していて大丈夫なのでしょうか?

国が考える食料供給の今後の懸念点

農産物の国内生産能力維持に対して国は、本稿で述べた販売面での支援策や、雇用面での支援策(コチラの記事を参照)を今後しばらく続けていくでしょう。
しかし、私たち日本人はすでに海外から輸入される食料にも大きく依存して生活しています。
今回のコロナ禍で、食料輸出国の多くがその輸出を制限したり輸出停止しており、世界規模の食料流通がどうなるのか予測できない状況です。
国内が大丈夫でも、国外から日本に入ってくるべき農産物がストップしてしまう危険性が考えられるのです。
日本政府もその事は心得ており、6月26日の段階で「食糧安全保障の強化と見直し」を関係閣僚に一斉に指示しています。

食糧安全保障は大事なキーワードに

食糧安全保障とは「日本国民が国際的な食糧危機の悪影響を受けない様に、考えられるリスクに対して先回りして建てている対策」の事です。
具体的な対策としては次の4つが食糧安全保障の強化につながると考えてください。

①可能な限り原料を国産に切り替えること
例えば、牛乳を絞るための牛が食べる牧草や餌の国産比率を増やす事なども含まれますし、国産もやしの種豆も実はほとんどが輸入していて国内では発芽させているだけだったりします。
ほんの一例ですが、このように色々な原料を海外に頼っているのが日本の農業だったりします。

②海外との農産物供給網を強化しておくこと
商社の仕事であったりもしますが、特定の農産物を一つの国からの輸入に大きく依存していたりする事はこれからの時代、大きなリスクになるということです。
貿易のやり方でリスク分散する事なども含めて国家間流通のチカラを強化していこうというものです。

③穀物の備蓄増強
コメや小麦などの穀物は今までも国として備蓄する量を決めていましたが、今回のコロナ禍によって今まで以上に備蓄量を増やすことが国民の安心のために必要となりました。
そのための備蓄場所確保や備蓄技術向上を国として後押ししていくというものです。

④生産余力の充実
これは自国生産能力の低い農産物はその生産量を増やせる様に、そして今まで以上に農産物輸出を拡大できる様にしましょうという最も基本的な対策です。

要するに日本の農業生産事業者に今まで以上に強い経営をしてもらえる様に国として後押ししていくという方針を日本政府は示しています。

04まとめ

まとめ

新型コロナウイルス感染症が全世界で顕在化した2020年1月から現在(2020年7月)までに

  • 日本では食糧供給に大きな問題は発生していない事
  • 農業界は全体として従来の経営を維持できているが、生産する品目によっては販売不振に陥る農家も出てきているという事
  • 国は販売面と価格維持の面で支援をしているという事
  • 私たち国民の安心のために、今後は海外と輸出入にも目を向けて「食糧安全保障」を強化していこうとしている事
を解説してきました。

海外ではすでに食料危機によってデモ行進や暴動が起きている国も出ています。
対岸の火事ではなく、私たち日本人もまずは食料供給の現状を知る事が、今後ますます必要となっていきそうです。

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