うちの地元でできないだろうかというマインドを持つか持たないかが岐路

日本の林業のビジネスとしての今後の発展についてはどの様に見通しておられますか。

林業も農業、漁業と同様です。問題意識をもって成功事例を見に行く、そしてうちの地元でできないだろうかというマインドを持つか持たないかが岐路となるでしょう。

林業の将来の一つは CLT(Cross Laminated Timber=クロス・ラミネーテッド・ティンバー)だと思っています。岡山の真庭市という地域に銘建工業株式会社という日本一の CLT メーカーがあります。板をクロスに重ねて圧着した木材で、強度も高く活用の幅が広いものです。この技術はヨーロッパでは 1980 年代からあるのですが、日本の場合、山は林野庁、建物は国土交通省が担当しているためか、その技術が定着しなかったようです。これではだめだということで、銘建工業の中島社長が行動を起こされました。

ヨーロッパでは、オーストリア、ドイツ、ノルウェーでCLT建築がさかんです。木造の 5 階建ては当たり前で、10 階建ても立つようになって、今度はノルウェーで 16 階建てができました。木で軽いからそんなに深い基礎工事は必要ないし、面構造ですから一部屋一部屋を作って、持って行って、現場で組み立ててればよいので、ゴミが少なく、工期も短い。

今まで日本の林業は、「一本柱数千万円」という商売を中心にしていました。しかしそれだけでは、その他の間伐材などは金にならず、外材にやられちゃうわけです。林業における一人当たりの生産性は、日本はオーストリアの 3 分の1です。機械を入れることによって生産性を上げ、CLT によって需要を増やす、これだけでも日本林業は変わっていくのではないでしょうか。また、CLT を普及させても、外材の CLTを輸入するようでは本末転倒です。これを国産材でできるところまでもう一工夫が必要だと思っています。

宮崎の例ですが、木の直販というのをやっています。農業や漁業と似たような話で、今までどうやって売るか、ユーザーにどうやって届くか、ということには必ずしも関心がなかった。そこを乗り越え、産直で消費地へ運んで、そこの建築業者とコラボして、家を建てるというビジネスは成功しています。

日本の都市部に国産木造を使用した10階建てのビルがたくさん建ったら面白いですよね。可能性は大いにあります。

農業でも、漁業でも、林業でも、各地の成功事例をもっと多くの方に見て頂きたい

漁業に関しては、どうすればオープンになり、次世代に引き継がれていくのでしょうか。

ポイントは資源管理、養殖技術、冷凍技術の3つだと思います。農業と漁業は農耕型と狩猟型ですから本来的には違うものです。そこで「略奪型漁業」と一部で言われたように、資源そのものが危うくなってしまったところがあります。その点の管理を行政がやらなければならないと思います。

養殖技術は、近畿大学のマグロが有名ですね。養殖は先ほどの例でいうと「農業に近い漁業」と言えるかもしれません。冷凍技術では島根県・隠岐諸島の海士町における CAS システムを使った岩かきの冷凍が有名です。これは解凍しても同じ鮮度で食べることができますから、高度な冷凍技術によって豊漁不漁の波を抑えることができます。資源管理、養殖、冷凍、この三つによって漁業は全く新しいステージに移行すると思います。

日本の海の面積は世界第6位、体積は世界4位です。この恵まれた環境で資源管理をしっかりと行う、養殖・冷凍技術を高める、そして経営という概念を取り入れる。これはある意味、白いキャンバスに絵をかくようなところがあります。だからこそ、他業種の漁業参入というのが出てきたのだと思います。そういう例はあちこちで増えてくると思いますし、企業型の漁業にもこれから先の可能性はあると思います。

食べ方の問題では、全漁連が提唱している「ファーストフィッシュ」というものがあります。昔と違って魚を丸ごとさばける人はほとんどいません。魚は切り身で売っているとみんな思っているわけです。だけど更にもうひと工夫して、少し温めれば、少し焼けば、出来立ての美味しい魚料理ができますよというところまで加工することによって、もっと魚の領域は増えていくはずです。

漁業の物流についても、氷水では重いですが、新しい冷凍技術を利用すれば重量はかなり軽くなります。離島の漁業を変えていくのはそういう最新の冷蔵・冷凍技術でしょう。これも面白いなと思っています。「いい魚取ってくるぞ」という漁師さんたちが別の業種とのコラボレーションをすることによって、魚が高く売れ、漁師さんの手取りが増えるようになれば良いと思います。

先ほどの海士町では、漁協が主体となって新規参入を募り、企業とコラボするという決断をしました。このような例が伝わっていけば、漁業は変わっていくと思います。

農業でも、漁業でも、林業でも、各地の成功事例をもっと多くの方に見て頂きたいと思います。私も「行ってみて初めて分かった」ということが多いですから。

2016年8月24日 石破茂事務所にて

インタビュアー:株式会社 Life Lab 代表取締役 西田裕紀

2006 年に株式会社 Life Lab を設立して以来、農林水産業の人材分野で事業展開。同社の運営する「第一次産業ネット」は農林水産業専門求人サイトとして国内最大級まで成長。「未来の農業をつくる」という理念のもと、今後もより一層農林水産業界への貢献度を高める。

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