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    【なぜ農業ビジネスで起業したのか?】アグリビジネス起業家3人が語る「起業のきっかけ」 Agri-Business Career Summit 2016 セッションレポート(前編)
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    農家の法人化や企業の参入、地方創生、食料自給率などの多方面で注目を浴びる農業・アグリビジネス業界。そんな中、第一次産業ネットが2015年2月に開催した新卒者向け就職イベント「Agri-Business Career Summit 2016」より、いま農業・アグリビジネス業界で注目を集めるベンチャー3社の起業社長とライフラボ代表が語ったトークセッションのレポートを3回に渡ってお届けします。

    【ゲストスピーカー】
    ・株式会社あどばる 代表取締役社長:中野 邦人氏
    「食に対して付加価値をつけ、目の前のお客様に喜んでもらう」という企業理念の下、飲食店運営・支援事業を行う。食材生産から販売までを手掛ける6次化の一環として食材のネット通販も開始するなど、食に関わる幅広いサービスを提供。

    ・株式会社農業総合研究所 代表取締役社長CEO:及川 智正氏
    生産から販売まで農業をトータルグランドデザインする農産業創造ベンチャー。スーパー内に直売所を設けてコーナー化する『農家の直売所』事業や、日本最大の屋上貸農園『都会の農園』事業など、農業界で新たなビジネスの可能性を創造する先進的な事業に次々と取り組む。

    ・株式会社ファームノート 代表取締役社長:小林 晋也氏
    酪農・畜産向けクラウドサービスに特化したITベンチャー。2014年にリリースされた牛の個体管理スマートフォンアプリ「Farmnote(ファームノート)」は導入牧場350か所、総管理頭数40,000頭を超える実績を誇るなど、酪農・畜産業界に大きなイノベーションを起こしている。

    【モデレーター】
    ・株式会社Life Lab  代表取締役社長:西田 裕紀
    農林水産業専門の求人サイト「第一次産業ネット」を運営。農林水産分野の人材のフロントランナーとして、これまで数多くの就農(就職)希望者と日本全国の生産者とのマッチングを実現。

    なぜアグリビジネス業界で起業したのか

    西田裕紀氏(以下、西田):
    ライフラボの西田と申します。今日は堅苦しい感じではなくて、せっかく若い経営者の方に来ていただいてますので、農業界・アグリビジネス界が今後どうなっていくか等、そのあたりをぶっちゃけというか、本音トークで語っていただきたいと思っています。
    では早速一つ目のテーマなんですけど、「起業のきっかけ ~なぜアグリビジネス業界で起業したのか~」といったところ、起業の経緯をまずはお話しいただきたいと思います。及川さん、まずはお願い致します。

    新しい流通をつくりたい

    及川智正氏(以下、及川):
    起業のきっかけなんですけど、たぶんですね、今日来られているほかの社長さんは『起業したい』と思って起業された方が多いのではと思うのですが、僕の場合は全く違います。

    まずは「日本の農業をどうにかしないといけない」と、という気持ちからはじまって、自分で農業をやって、自分で八百屋をやった結果、生産現場でも販売でも厳しかったんですね。これを繋げることができない限り、日本の農業はやっぱり変わらないんじゃないか。ということで、そういう会社があれば入りたいなと思ってハローワークに行ったところ、紹介された会社が2つ。1つが農協さん、もう1つは市場さんを紹介されたんですね。いや違う、と。僕は新しい流通をつくりたいわけで。「無いなら自分で作ってしまおう」と始まった会社が株式会社農業総合研究所です。

    なので、はじめから農業ベンチャーを起業しようと思ったわけではなくて。生産現場と販売現場の両方を経験した結果、自分でやるしかないと思ったから、起業に至ったと、そんな感じです。

    西田:ありがとうございます。小林さんはいかがですか?小林さんは、元々はITの別の会社を経営されて、その後にファームノートを立ち上げられたと思うんですけど。

    帯広から世界的な企業をつくりたい

    小林晋也氏(以下、小林):
    僕はちょうど皆さん(参加学生)ぐらいのときに起業しまして、ちょうど今10年くらいなんですけど、帯広から世界的な企業を作りたいなーと思って会社を作ったんです。この「アグリビジネス界」に参入したのはちょうど2013年の11月になります。なので、まだ1年と2カ月くらいなんですね。アグリビジネス界に入った理由と言うのが実は3つ、明確にありまして。一つは「家業」、というか「家」。二つ目が「偶然」。三つ目が「市場性」。

    一つ目の「家」の問題と言うのが、まあ問題では無いのですが、うちの両親とも祖父は農業をやってたんですが、母方の方は継げないまま離農してしまって帯広市という所に移ってきました。今も畑を持ってるんですが、全部貸しちゃってる。ということで、子供のころから農業に関わりはありましたし、畑仕事手伝わされてましたけど、子供のころから全然興味無かったんで、そのまま東京でITベンチャー立ち上げてやってました。そんなわけで、家の繋がりで農業というものが身近だったというのが一つ。

    で二つ目の「偶然」なんですけど。IT企業を立ち上げて、今東京の大企業さん、上場企業を中心にだいたい160社さんくらい我々の顧客いまして、そこで「情報を共有するための技術」を身に付けたんです。たまたま2013年の5月に、今日いらっしゃっているノベルズさん〔交流会出展企業:株式会社ノベルズ〕という、今1万6千頭くらい飼っている、もう超大規模の牧場さんから偶然お問い合わせを頂いてですね。ご紹介頂いて現場を見させていただいたら、「畜産技術はものすごい高い」って思ったんですけど、ITの余地ってもっともっとあるなということで「偶然」そこで可能性を知った。って言うのが二つ目。

    三つ目、「市場性」と言う事で、日本の畜産酪農技術、特に酪農技術というのは、世界トップレベルなんですね。で、その世界トップレベルの中でさらにトップなのが北海道十勝です。いま日本の牛の10%が十勝にいますし、日本の生乳生産の15%は十勝で賄っています。1頭あたりから搾れる牛乳の量は日本で一番です。そういう酪農技術がここにある。で且つ、世界の酪農市場というのは20数兆円。特に富裕層が新興国でどんどん増えています。みなさん、おいしい食べ物には乳製品が入っているわけですね、女の子乳製品無いと生きていけないですよ。スイーツ、あとはバター、チーズだとかですね、贅沢するとそういうのはどんどん増えますから、人口が増えていくとそういう物の需要がどんどん増えてくる。なので市場規模が今どんどん酪農っていうのは拡大しているんですが、日本は下がっていってしまっているんですね。だから技術力は世界トップレベル、この技術を使えば、世界に14億頭の牛いますから、この1頭1頭に対して付加価値を提供できれば、世界規模の企業ってのも作れるだろうということで、このビジネスに参入したというのがわたしの起業のきっかけになります。

    西田:ありがとうございます。中野さんは、いろんな事業を手掛けられていると思いますが、そのきっかけはどこから入られたのかっていうのを聞かせていただきたいのですが。

    飲食店側の立場で、どんな付加価値を出せるか

    中野邦人氏(以下、中野):
    僕は、2008年に起業したんですども、あくまで起業した時は飲食店側だったんですね。今も飲食店をやっていて、2010年にぐるなびさんと共同で、銀座で「マルシェ デ ギンザ」という、地方自治体と生産者をPRするお店を作ったのが、農業に関わるようになったきっかけなんです。どういったお店かと言うと、1、2ヶ月に1回、PRする自治体や生産者さんが変わるんですね。なので最初は三重県からスタートして、その後茨城だとか北海道だとか、そういった自治体を20自治体くらい3年半でまわるプロジェクトをやっていました。そこでさまざまな生産者さんと会って、悩みだとかPRしたいポイントだとかをいろいろ聞いてる時に、もしかしたらこれって意外に面白いんじゃないかなあ、っていうのが、最初のきっかけです。

    で、そこから2011年に、ご存じの震災が起きて、生産者さんが結構困っている時があったんですよ。そこでうちに出資をしてくれないかと言う話があって、そこで豚の農場さんに出資をさせていただいたのがきっかけです。そこから、我々が買っている豚と生産者さんがつくってる豚の卸値の金額を比較したときに、こーんなに、自社で生産するとコストが安くなるんだなと。これだったら意外と自分たちも参入したら面白いんじゃないかと思って、且つ、その時特に―今もそうですけども―生産者の顔が見える商品というのが飲食店で売りやすかったんです。飲食店のPRにも繋がるし、原価も下がる。そして自分たちが作りたいものをお客さんに提供できる。それが非常に大きいなと思って。

    そこから実際宮崎に黒毛和牛の安愚楽牧場さんが倒産した時に、我々も一部譲ってもらって、自分たちで黒毛和牛作ってみたりとかしていました。千葉の農場も、黒豚からスタートしたんですけど、今ではSPFの豚を作っています。あとは、徳島の方で「阿波尾鶏」という地鶏があるんですけども、日本で一番売れている地鶏なんですね。そこの一番大きな生産農家さんと提携させてもらって、うち専用の阿波尾鶏を作っていただいて、それをPRする阿波尾鶏っていう店を銀座や六本木に作りました。

    そういったものをあくまで、飲食店側の立場で、生産者さんにどんな付加価値を出せるか、そんな切り口からやらせていただいたのが起業のきっかけになります。

    生産事業参入での苦労

    西田:ありがとうございます。まったく違う切り口から始まって、今では生産もされていると思うんですけど、ビジネスとして苦労しているというところはありますか?生産してみて、これは難しいとか、大変だとか。

    中野:苦労ばっかりしてます(笑)。
    なぜ苦労ばっかりしているかというと、我々があくまで飲食店目線なんですね。で、当然生産者さんからすると生産者さんの目線があって、我々はあくまでこの金額が「店着」―店舗に届く価格を「店着」って言うんですけど―まあ店着価格で来て、こういった生産者の顔が見えて、この商品だったら売れるなと、そういった目線が入ってしまうんですけど、作っている方はそんなこと全く関係ないんですよ。別の想いがあって、当然別の良いものを、崇高な想いを持っているんですけど、店側とは多少ギャップがあるんですね。

    そのギャップを埋めるのが自分の仕事かなと思いながらも、当然ギャップに気付くのは起こってしまった後からの話なんです。実際、黒毛和牛の話で言うと、たくさんまとめて自分たちの牛を肥育させてもらうような機会をもらって、肥育をして実際にいざ出荷するって時に、売れる店舗がそんなになかったんですね。マーケットは自分たちで作るか、もしくは肉の卸屋さんにでもなろうかとも思いながらも、日々出荷とかされてって何トンとかになっていくと、結構な在庫量になっちゃうんですよ。そこら辺が当然やってみなきゃ分からなかった。事前に計算すればわかるじゃんという話はありながら、まあここまで売るのが大変なのとか、そういったことが分からず失敗した経験はありますね。

    就職・起業を考える学生へ

    西田:ありがとうございます。今、起業についてお話いただいたんですけど、学生のみなさんって、まずは就職だと思うんですけど、ゆくゆく起業したいって方この中にいらっしゃいますか?

    (ちらほら手が上がる)

    そこはまだみなさんあまり考えていないというところですかね。皆さん起業されているのですが、アドバイスと言うか、学生の方にこれから就職するにあたって、これからどういったことを取り組んでいったらいいのか、こういうのをモチベーションにやったらいいんじゃないか、みたいな事ある方いらっしゃいますか。

    自分がどこに時間を使いたいかというフォーカスを決める

    小林:起業するも働くも、時間を使うということは変わらないと思うんですけど、自分がどこに時間を使いたいかというフォーカスを決めるというのはすごく重要だと思います。起業しようが、しまいが。

    で、起業はですね、ほんと相当苦労しますが、自由度は高いので、自分の大きな夢を叶えるっていうのは叶えやすいと思います。ただ、僕、10年くらい社長やっているんですけど、1ミリも楽しいと思った事は無いです。

    (会場笑)

    ただ、これだけやろうと思っている何かがある、ということですよね。その何か、というフォーカスを決めると言うか、勝手に決めさせられていると言うか。僕の場合は決まってたんですけど。

    就職する時も、目的無いまま就職すると悲しいことになるので。たとえば僕が一回だけサラリーマンで経験してる事なんですけど、21才で就職したときに、3年後に部長になろうと思って入ったんですね。まあ50人くらいの会社だから3年で部長になれないくらいだったら早く出ようと思ってたんですけど。ひたすら勉強したんですけど、組織の壁みたいなやつにやられて、倒れてしまった。でも結局、今はその部長になろうと思ったときに積んだ経験が、今絶対活きている。就職しようがしまいが、何に時間を使うかってことは真剣に考えた方がいいんじゃないかと思います。

    3年間はがんばってやるということはやっぱり必要

    及川:起業が目的じゃない、ってとこじゃないかと思います。皆さんが何をやりたいか、そこが一番重要じゃないか。ただしですね、いきなり大学を卒業して、これがやりたい、あれがやりたいって無いと思うんですね。なので、これは別に起業するしない別にして、まずは、先ほど小林さんが仰った通り、3年間くらいはがんばってやるということはやっぱり必要じゃないかと。

    で、ちょっと起業の話とずれてしまうかもしれませんけども、たぶん、ここにいる社長たちはですね、20代、もう吐くほど働いたと思うんですよ。その経験があるからこそ、いまの30代があるわけであって、たぶん、ここにいる会社はブラック企業ではないんですけど。ただし、自分から進んで20代働いていけばですね、まずおもしろい30代を迎えられるんじゃないか。なので、ぜひ、みなさんも社会に出たら、まずはやりたいことを自分で探しながら、今ある職場で一生懸命働くこと、これが将来的な基礎になっていくんじゃないかのなと思うので、死ぬ気で働いてください(笑)

    西田:ありがとうございます。ちょっとあの、ブラック的な発言が入りましたけど、はい(笑)

    ではそろそろ次のテーマにいきたいと思います。次は「業界未来予想図」ということで、皆さん、それぞれ専門の分野があると思いますので、皆さんの専門分野と農業界・アグリビジネス界という感じで、今後、こういう感じになるんじゃないか、この辺にチャンスがあるんじゃないか、そういった話をしていただきたいなと思っています。

    (中編に続く)
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